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* * *
「コウちゃん、見っけた!」
頭からかぶっていた布団が乱暴にとられて、団子虫みたいにまるめた体が光を浴びた。
呼び鈴を鳴らしたのはハルカだった。彼女は玄関からズカズカとあがりこみ布団を剥いだ。
「なにしてんの? 独りかくれんぼ? 相変わらずヒキコモリだな、コウちゃんは……」
ハルカは人を見下すような、侮蔑を含んだ笑みを見せた。
誰がそんな寂しいことするか! と反論したかったが、この状況をうまく伝える方法が思いついかなかったので諦めた。
その代わりに、「そのコウちゃんって言うの、いい加減やめてくれない?」と小さく言った。
神崎ハルカとは長い付き合いだ。いわゆる、幼なじみというやつなのかもしれないが、小さい頃は彼女の存在は恐怖でしかなかった。彼女はほくろ一つない、人形のような整った顔からは想像もできないことを平然とやってのけた。
コウちゃん、あの木の枝に鳥の卵があったから取ってきて。コウちゃん、ガマ取ったから一緒に食べよう。コウちゃん、蛇捕まえたからあげる。コウちゃん、コウちゃん……。
今では笑い話だが、当時は震えが止まらなかった。その軽いトラウマと、僕があまり外に出たがらないことの関係は無くはない。
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