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「コウちゃん、パソコンに変なエラーメッセージが出てるよ」  ハルカは僕の小さな抗議を無視して、今度は勝手にパソコンをいじりはじめた。 「ああ、コンパイル・エラーだよ」 「何それ? またゲーム用語?」  まるで芋虫か何かを見るような目で、僕を見つめる。 「ゲーム用語じゃなくて、プログラム用語」 「でもゲームのプログラムなんでしょ? どっちでも一緒じゃん」  そんなことより早く説明しろ、と言いたげなハルカに渋々説明した。 「機械の世界には0と1の羅列しかなくて、人間が理解しやすい言語のプログラムから機械の言語に翻訳しないといけない。でも機械っていうのは融通がきかないから、ほんの少しプログラムに間違いがあるだけで、無理ですってエラーを出すわけだ」 「へぇ。じゃあコウちゃん、間違えたんだ」  けらけらと笑うハルカを睨んだ。まったく、誰のせいでこうなったと思っているんだ。  数日前にもハルカはこの部屋に来た。迷惑にも「お仕事、手伝ってあげるよ」とキーボードを打ち込むこと三時間。僕が何ヶ月もかけて作っていたプログラムは、見事に崩壊した。  具体的に言うと、平凡な恋愛シミュレーションと戦争アクションの二つのゲームを作成していたのだが、なぜか強面の軍人を口説き落とすという不可解なことになっている。
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