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ルナストーン……それはこの建物の地下研究区画に保管してある未知のエネルギー源だ。
オオガミ時代にはそのエネルギーが熱心に研究されていたが、ジャジメントへ統合後は部門自体が縮小、形骸化した。
そしてジャジメントが起こした具現化と、その解体による混乱でここの守りは手薄だ。
それこそ私みたいな死に損ないを頼らねばならないくらい。
「……お前だってわかるだろ。」
「わかんないから聞いてんのよ。」
ヤツと視線がぶつかる。
……それまで迷いの無かった瞳が一瞬揺れた、気がした。
「俺も……もう長くはないんだ。
もって一ヶ月。
……そんな中、ようやく居場所を突き止めたんだ。
手に入れない道理はないだろ。」
……やはり、そうか。
普通、ルナストーンを狙う理由なんて一つしかない。
「……なるほど、人間になりたいのね?アンタは。」
そう、ルナストーンにはアンドロイドやサイボーグを生の身体を持った人間へ作り直すエネルギーがある。
「でも大丈夫?
ルナストーンはちゃんとした施設と技術者がいないとちゃんと扱えないわ。
それによしんば人間になれたとして、寿命が伸びる保障もないのよ?」
「それでも……仕方ないだろ……。
俺はまだ死にたくない……生きて野球がやりたいんだよ……!」
声が震えている。
ここまで弱ったコイツを見るの初めてだ。
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