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この瞬間に勝負は着いた。
首を落とすということは、生物にとって死の象徴。生きているとしても、その傷は致命傷となり、残る時間を数えるだけ。
だが、巨人は生物では無い。
人型機動戦術兵器、人呼んで戦術機。人類の叡知の結晶。
道具を使い、剣技を繰り、滑らかに動き、己と互角に戦う巨人をただのカラクリなどとは、黒鎧には到底想像だに出来なかった。
その油断。一瞬。
『メインカメラ破───』
『ハッチ解放っ、両腕共に換装っ!』
双剣は未だ健在。黒鎧へと襲い掛かる。
「なっ──っグゥッ!」
混乱を突くも、大剣にて防御。
次いで、思わぬ光景。巨人の胸が弾け飛び、己へと飛び来る。脅威でも無い。ただの鉄板。腕で払い除けるが、その先。
「にん……げ…ん?」
巨人の胸の中、野犬のような瞳が睨んでいた。二度目の混乱。
「よう、初めましてナイト様ってか!」
中の男が手を動かすと、巨人の剣が振り掛かった。視線を動かせずそのままに防ぎ、黒鎧の明敏は理解する。連動。この男が巨人の操り手。
それが間違い。頭脳を戦闘から離し、現状の分析に費やした。黒鎧は巨人の動向に全てを傾けていなければならなかったのだ。
そうしていれば投げられた双剣、軽すぎる双剣に気付き、 己に迫る手に気付くことが出来ただろう。
「しまった……っ!」
巨人の右手が黒鎧の眼前で制止する。
掌は目の前。中心に穴。
「Revolve squeeze《リボルブ・スクイーズ》。オールバースト」
巨人の中の声が宣告する。
「お前を圧殺する」と。
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