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景色がスローモーションに映り黒鎧の眼はそれを捉える。
掌から放たれる砲弾。連続して三発。
本能が読み取る。それに込められた悪意にも似た凶悪な性質。
受けるか避けるか。どちらでもない。
黒鎧はその剣閃にて凶弾を斬り裂いた。
中から無色の何かがどろりと溢れる。
溢れ出た何かは景色を歪め、稲妻を放ち、円球状に黒鎧を捉えた。
「───ガァァァァッ!?」
捻れ、圧し、潰す。味わった事の無い痛みに初めての悲鳴。
凶弾の名は空間圧縮弾。
光すら歪める、物理など及ばぬ破壊の顕現。特性上近距離でしか撃てないが、それは防ぎようもなく、範囲に入れば避けようもない接近戦絶対破砕兵器。
「我は、魔王っ! 人間っ──如きにぃ!」
それを耐える。潰えない。誇りが、傲慢が突き動かす。彼の者は魔王。元より人智を越えた存在。
だが、その身は既に朱の染みが身を覆い、その身を縛る。それでも尚振るう剣で、その右腕を斬り払った。
「お前凄ぇよ。身体一つで。こっちもこれで全部。これで終わってくれなきゃ俺が終わりだ」
魔王に残された左腕が翳される。
蒼く蒼く。その手は淡く輝く。
それは、機体に残る全エネルギーの集束が放つ光。文字通りの全力の結晶。
「これは……っ! 良い、良いぞ人間っ! 私も全力を尽くそう。二重詠唱っ! 戦神となり我が身で謳え! “Crom-Cruach"」
朱は身を越え螺旋を紡ぐ、魔王の周囲を回るような朱の蛇は剣へと集い、エネルギーの塊が眩い赤柱となった。
「Radiant hound《レディアント・ハウンド》。放て」
蒼の光が朱へと放たれる。
咆哮にも似た音と共に、瀑布の如く魔王の身体を呑み込む圧倒的なエネルギーの塊。
一転、静寂。左腕を翳したまま戦術機が動きを止める。周囲の煙が魔王の姿を包み隠し、その安否は掴めない。
『全エネルギー排出。ガス欠だ』
「さて、後は騎士さんのみぞ知るって事か」
勝負は決した。
未だどちらが勝者とも言えぬままに。
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