Prologue

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とある神殿。そこに黒い鎧と鉄の巨人が睨み合う姿があった。 鎧は滑らかな線を描く西洋造りに似た甲冑で、巨大な剣を構えている。 鉄の巨人は全身を武骨な角を描く輪郭で、大きな胴を支える短い足と、手にはその巨体に釣り合う銃が握られている。 黒鎧は真っ直ぐと大剣を掲げ、その日何度目かの言霊を紡いだ。 「其の身は切り裂く鉄に非ず。 其の身は魔を絶つ銀に非ず。 其の身は鍛えし鋼に非ず。 其の身は呪いで出来ていた。”Dainsleif“」 詠唱。扉を開く。 現界。黒鎧の上空に無数の刃。 射出。刃の雨が鉄の巨人を襲う。 『ファァァックッ! さっきから何だそりゃあ!? ナビィィィっ、シールド展開ぃっ!』 『ふぅ……だから言ってんだろ。あれは第三力学における空間への干渉。大気中のエーテル物質の反応による────』 『シャッラップ! んな事聞いても全くわからん!」 鉄の巨人の言葉に反応するように光の壁が現れ、刃の雨を凌ぐ 。 同時に鉄の巨人は足裏の車輪を回転。大きな轍を残し高速移動。次いで銃口から火を吹かせる。機械的な連射による弾丸が黒鎧に襲い掛かる。 だが、黒鎧に届くことは無い。黒鎧の周囲に張り巡らされた障壁により弾丸は弾かれ、掠り傷もつけることは出来なかった。 『ファック! ファック! ファァァァック! だから何なんだよテメェは!? 対戦術機用の徹甲弾だぞっ? 一個の生命体が防いでんじゃねぇよ!』 『エーテル力場による障壁だって。これで説明は五度目ですよ、お猿さん』 『誰がお猿さんだ! このクソAIッ!』 彼らは長き戦いに暮れていた。 その戦いの始まりに、少しだけ巻き戻ることとしよう。
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