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────三時間前。
古ぼけた祭壇を囲う三種の魔物。
彼らは太古より生きた魔族。
古き儀式により世界を闇に包むと言われる魔王の召喚を目論む者達。
「偉大なる魔王よ」
「ムジヒナルワレラガオウヨ」
「祈りを聞き届け、その姿を現したまえ」
祭壇の前に跪き、祈りを捧げる三者三様の魔物が声をあげた。
祈りに答えるように祭壇は眩い光を放ち、やがて天を貫く光柱となった。
「おおっ、願いが届いたのじゃっ! これより魔族の栄光を取り戻し世界を……なんの音じゃ?」
魔物達の耳に届いた、空を切り裂くような甲高い音。
「……はて、こんな音は予言書には書いて──なんじゃいっ!?」
魔物達は互いに顔を見合わせ、顔を傾けていたその時、轟音と共に壁が砕け『巨大な何か』が勢い良く魔物に転がり行く。
「あれが……魔王様? ってこっちに来──ぐえぇぇぇっ!」
「ゴハァァァァっ!?」
「マオウサマニエイコウアレェェェッ!」
三体の魔物はプチプチと『巨大な何か』に押し潰され、とどめとばかりに雪崩の如く押し寄せる瓦礫に埋もれてく。
数秒の静寂の後、『巨大な何か』は粉塵が舞う中、節々から煙をあげて『二本の足』と『二本の手』を使って滑らかに起き上がった。
それは、まるで鉄の巨人。
立ち上がった鉄の巨人の胸に当たるであろう部分が開き、中から全身を黒で覆った黒い男が現れる。
「アララ……建物壊しちまった。未確認惑星への干渉は厳禁だってのに……。まぁ、被害者がいないみたいだし良いか」
黒い男は辺りを見渡すと、悪びれない声で呟く。
被害者は三名程瓦礫の下にいるのだが、それには気付いていないようだ。
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