Chapter 2 A bird in the hand is worth two in the bush.

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「盗賊退治……ねぇ。根城が分かってても、何人いるかもわからねぇんじゃなぁ…」 「何だ、まさか怖気付いたのか? いや、この私と戦い、生き延びた者が盗賊程度に恐れを為す筈も無いが」 茶化すように言うレヴィ。 宗一郎は言葉を返さず腕の機械に目をやる。それには戦闘補助に使える『ある装置』も付いている。戦いとなれば頼りにもなるだろう。 だが、それを持っても宗一郎の本心は正にレヴィの言う通り。恐怖。純粋に。彼は根っからのパイロットなのだ。格闘術の心得は有る物の、剣を、槍を持った相手との実戦経験など無い。怖くて当たり前だ。 『相棒。嫌なら他の方法を探っても良いんだぜ』 「何だ、本当に嫌なのか。情けない男だ。ならば、貴様は指をくわえて待っていろ。私が一人で賊を討って見せよう」 妙に優しい一人と一台。 AIの方が言葉に角が無いのはどうかと思うが。 「……はぁ、行くよ。女一人で行かせたら男が廃る。やるかどうかは賊の規模しだいだがな」 仕方ないと言う様子でそう言うと、コリンの持ってきてくれた毛布を被る宗一郎。 「だから、明日に備えて今日はもう寝ちまおう。おやすみ二人とも」 「あぁ、良き夢を。私も眠るとしよう」 『Nighty-nighty』 余程疲れていたのだろう。眠ると決めると宗一郎の意識は途端に薄れていった。 薄れる意識で一日を振り返る。 この惑星に不時着し、訳の分からぬまま強敵と戦い、愛機は壊れ、契約を交わし、森に迷い、村で恐れられて物置小屋で眠る。 とんでも無い一日である。そして、明日は盗賊討伐。考えるだけで嫌気が差した。脳が睡眠と言う名の現実逃避を願っているのかもしれない。 彼の思考は最後に「鎧の上から毛布かけて意味あるのか?」と言う疑問を浮かべなから途絶え、彼の遭難一日目は終わりを告げた。
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