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まだ、少年の身。されどその放つ気は卑しくも国の頂点足る三人の身をすくめさせた。
「え、えぇい、衛兵よ、何をしておるっ! グレンを追い出せいっ!」
数秒の静寂を孕み、我を取り戻した王が顔を赤くさせて喚き立てた。だが、グレンは冷静に言葉を返す。
「兵など不用です。御命令と有れば、己の足で退がりましょう。私は王の配下であり、貴方の息子なのですから」
一礼を交え、部屋を退出するグレン。慌ててやって来た衛兵もグレンに手を引かれ、何事かわからぬまま玉座の間を去っていった。
「ふむぅ……甘やかせ過ぎたかのぅ」
「臣下の立場からは何とも言い難いですな。『レイ』の名を与えるなどと……神の御心に反することを、王子の立場ともあられる方が仰られるとは」
「ははは…。私は将来が楽しみですがな。何はともあれ、ガルニアの使者には上手く言葉を濁しておきましょう」
「あぁ、父上。もう一つ良いですか?」
「ひっ!?」
柱の影から再び顔を出したグレンに三人は再び身をすくませる。一体、どうやったのか。神出鬼没。この少年は何時も何処からともなく現れる。
「な、何じゃ。まだ何かあるのか?」
「数日前から閉じ込めていた筈の『おてんば』の部屋、メイドしかいませんでしたよ。一体、何時からいないのかは定かではありませんが……。では、私はこれで本当に失礼します」
再び一礼と共に退出。そして、再びの静寂。
『おてんば』ロランド城内でこう呼ばれるのは一人の少女。グレンの妹。ロランドの姫。
彼女はその名の通り、あまりのおてんばっぷりに、部屋にて謹慎を言い渡されていたのだが……それが消えたと言う。
「なんじゃとぉ!?」
暫くして玉座の間から響いた声に、グレンは一人ほくそ笑むのであった。
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