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場所を移し、ここはオリモ村北の山。
断壁の上で草木に紛れるようにしながら、宗一郎達はその山の中、下にある開けた空間を見下ろしていた。
そこにあるのは、木と藁で造られた簡易的な住居。それが三十は立ち並ぶ集落。そして、その周りを彷徨く軽装な武具を纏った、身なりの汚い、いかにもな賊達だった。
「おいおいおい……こりゃ、二人でどうにか出来る数じゃねぇぞ。やめやめ。帰ろう」
「二人じゃないよ。三人っ!」
「宗一郎、竜だ、竜がいるぞ。アイツは私にくれ」
「あん、竜だぁ?」
帰る方向に持っていきたい宗一郎と、全くその意を介してくれない二人。レヴィの視線の先には馬の体を似せているがその首は蛇のように長く、加えて馬より二周りは大きな蜥蜴があった。
「何だありゃ? 竜は竜でも恐竜じゃねぇか」
「姉ちゃん。あれは首長竜だよ。馬みたいに人も乗れるけど、力があるから馬四頭で引く馬車も簡単に動かしちゃうんだって」
「お前あんなのが欲しいのか? いやいや、それよりも俺は帰ろうって言ったんだよ」
「クククッ、アイツがいれば馬車など不要だぞ。やったな宗一郎」
話を聞かず、既に手に入れた気でいるレヴィ。
五十はいるであろう盗賊達を前に、戦利品の話しかしない相方に、宗一郎は深くため息を漏らし、右手を翳した。強硬手段である。
「契約に基づき命ずる。帰れ」
「なっ!? 体が……貴様、敵を前に臆したかっ!」
宗一郎の非情な命令。しかし、それが不味かった。レヴィの叱責の声。それは余りにも大きすぎる。
「ちょっ、姉ちゃん! 声………」
「そこに誰かいるのかっ!?」
案の定、盗賊の一人に見付かってしまった。
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