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「ヤバい見付かった! 逃げるぞ!」
「えっ!? 待ってよ兄ちゃ……うわっ!?」
焦ったコリンが足を滑らせ、断壁を落ちる。宙に舞った子供の体。宗一郎が咄嗟の判断で飛び、その体を掴むも、共に落ちていく。地面との激突の目前、宗一郎が叫んだ。
「ナビっ、重力装置! 反転だ!」
『合点承知の助!』
瞬間、ふわりと体が浮き、地面へと着地する。
「ふぅ………助かっ………………」
助かった。そう言うには早い事に気付く。何故ならそこは断壁の下。盗賊の根城その場所なのだから。
子供を抱いた全身タイツ。その姿は盗賊達の視線を釘付けにした。
「よ、よぅ。異常は無いか?」
そう言って何事も無かったかのように帰ろうとした。宗一郎は自分が悪人顔だと自覚している。だから、仲間と思われるかもしれない。そんな淡い期待を込めた言葉だった。
「お前が異常そのものじゃわっ!」
「捕まえろっ! 面白い格好しおって!」
「集まれっ! 変態が攻めてきたぞっ!」
「変態っ! 変態じゃあ!」
だが、そうは問屋が卸さない。
盗賊達が口々に散々な事を言いながら襲いかかってきた。
その口ぶりに、宗一郎の頭に血管が浮かぶ。彼とて気の長い男では無い。寧ろ短い。そんな彼が、罵られると答えは簡単。
「こんのクソ共…好き放題言いやがって! かかって来いやぁ! Wachhundのエースナンバー舐めんなよっ!」
と、こうなるのである。
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