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「コリン! この断壁、登れるか!?」
「う、うん。山ではよく遊ぶから……」
「そうか。なら、怪我しない内にここから離れろ」
宗一郎はそう言うと、コリンを腕の中から下ろし、迫り来る賊に向き直して、首元に手をやった。空気の抜ける音と共に、一瞬でスーツが宗一郎の頭を包みこむ。
「何じゃそりゃあ! 余計におかしな格好になりくさりやがって!」
賊が騒ぎながら振り下ろす棍棒。それを腕を盾にして受け止める。人間の腕など簡単にへし折ってしまう一撃。
「な、なんじゃあ?」
しかし、賊は顔をしかめた。おかしな感触。人間を叩いた手応えでは無かった。
「良いだろ? 耐熱、耐冷、耐電、そして耐衝撃の戦術機パイロットスーツだ」
「う、うおりゃあ!」
不審に思いながらも、再度宗一郎の体を打つ。今度は防ぎもせず腹で受け、賊の顔に一撃。拳を撃ち込んだ。
拳に怯む賊の後ろから剣。もう一人の敵。縦に降り下ろされるそれを躱し、膝。真横から踏みつけられた膝が、ボキリと耳障りな音を立てた。
生身で戦う事の無い戦術機乗りの宗一郎。だが、長年の死線により、研ぎ澄まされた感覚が告げる。背に迫る危険を。宗一郎は振り返らずに呟く。
「重力反転」
重力装置が作動すると同時に、バク転。背後から突く槍を躱し、その柄の上に着地する。己の槍の上に立つ宗一郎に、口を開けて固まる槍の持ち主。人間が乗っている。それなのに、殆ど重さを感じない。不思議な光景。次の瞬間、宗一郎の放った蹴りで、賊は意識を失った。
「な、なんじゃあ、今の技は……」
槍を手に取り、振り返る。
既に幾多の賊。四十は下らない数に囲まれている。当然だ。今の宗一郎の行動は、当初の予定通りの盗賊退治に他ならない。
宗一郎は周りの賊を一睨みして思った。
こりゃ無理だ。と。
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