Prologue

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「酸素濃度は……良し、っと」 男が首元に手を当てると、空気の抜ける音が響き、頭を覆うおかしな形の兜が首元に吸い込まれていった。 肩の高さで切り揃えられた髪が、外気に揺れ、その顔を顕にする。 「パイロットスーツのままで来ちまったが、これなら大丈夫そうだな」 猫のような吊りがちな目に、皺の刻まれた眉間。 その顔は残忍な賊のようで、お世辞にも人相が良いとは言えない。 「おい、ナビゲーター! 破損ヶ所は!?」 『ありません』 「大気圏強行突破で破損無し? おいおい、そりゃ、日頃の行いが良いにしてもツキすぎだ」 『HAHAHA! 面白いジョークだな相棒。お前の行いでこれなら、俺も宝くじを買ってみるかな』 「………誰だよこんなフランクなAI乗せやがったヤツは」 『開発者はオーマン博士。コンセプトは操縦者との意思の疎通により、物事の対処を円滑に行う。だってよ。ハッハッハッ。頭の良いやつってのはやっぱりどっかぶっ壊れてんだな』 「…まぁ良い。軍事回線で通信を繋いでくれ」 『あいよ。軍事回線オープン』 「こちら”Wachhund“機体No.01。未確認惑星に緊急着陸。戦術機体異常無し……」 『あ、メンゴ。やっぱ通信イカれてるわ』 「ウオォイ!? お前十秒前に破損無しって言ったばっかだろ!」 『こちとら初フライトで緊張してんだ、そう怒るなよ相棒。カルシウム足りて無いんじゃねえの?』
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