157人が本棚に入れています
本棚に追加
/202ページ
「酸素濃度は……良し、っと」
男が首元に手を当てると、空気の抜ける音が響き、頭を覆うおかしな形の兜が首元に吸い込まれていった。
肩の高さで切り揃えられた髪が、外気に揺れ、その顔を顕にする。
「パイロットスーツのままで来ちまったが、これなら大丈夫そうだな」
猫のような吊りがちな目に、皺の刻まれた眉間。
その顔は残忍な賊のようで、お世辞にも人相が良いとは言えない。
「おい、ナビゲーター! 破損ヶ所は!?」
『ありません』
「大気圏強行突破で破損無し? おいおい、そりゃ、日頃の行いが良いにしてもツキすぎだ」
『HAHAHA! 面白いジョークだな相棒。お前の行いでこれなら、俺も宝くじを買ってみるかな』
「………誰だよこんなフランクなAI乗せやがったヤツは」
『開発者はオーマン博士。コンセプトは操縦者との意思の疎通により、物事の対処を円滑に行う。だってよ。ハッハッハッ。頭の良いやつってのはやっぱりどっかぶっ壊れてんだな』
「…まぁ良い。軍事回線で通信を繋いでくれ」
『あいよ。軍事回線オープン』
「こちら”Wachhund“機体No.01。未確認惑星に緊急着陸。戦術機体異常無し……」
『あ、メンゴ。やっぱ通信イカれてるわ』
「ウオォイ!? お前十秒前に破損無しって言ったばっかだろ!」
『こちとら初フライトで緊張してんだ、そう怒るなよ相棒。カルシウム足りて無いんじゃねえの?』
最初のコメントを投稿しよう!