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前に牛馬の如く迫り来る大男。跨がるは首長竜。背後には賊の壁。逃げ場は無い。
宗一郎は槍を使い高跳びの要領で高く跳ぶ。首長竜の大足と大男の鉞を警戒しての跳躍。
「しゃらくせぇわっ!」
見た目に反し、意外にも機敏な反応を見せた大男。その鉞が空中の宗一郎を追った。しかし、大男は知らなかった。その男はパイロット。目と瞬間判断能力は伊達では無い。
「頭借りるぜ、ザウルス君」
首長竜の頭にふわりと着地し、上体を反らす。宗一郎の目の前を鉞が横切った。人間らしからぬ動き。大男が目を疑うように顔をしかめた。
鉞のその大きさ故に、一撃は強力。だが、その強力さは隙を生む。
「テメェの攻撃は、レヴィの千倍遅ぇっ!」
体を戻す力をそのままに、大男目掛けて首長竜の頭から跳ぶ。槍の使い方など知らない。槍を体で固定しての突進。それがいけなかった。
「ぶるあっ! 甘いわ小僧っ!」
馬のような声を放った大男は、体を捻り、脇でその刃を挟み込んだ。皮を裂き、血が舞う。
しかし、その程度。この大男は知っている。安いもの。命を賭ける戦いでは、この程度の負傷は怪我の内にも入らない。これが、経験の差。生身で戦ってきた大男と宗一郎の差がここで出た。
返す刃の鉞が宗一郎を襲う。
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