Prologue

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「座から呼び醒ませし者は貴様か?」 機械とじゃれあう男の耳に、鈴のような声が響いた。 砂塵が姿を隠す声の主は言葉を続ける。 「私の力に何を願う?」 「やっべぇ…。高知生命体がいたのか?」 「答えよ。願いとは?」 「いやいやいや、呼んでねぇから。すぐ消えるから気にしないでくれ」 「貴様、用も無く私を呼んだと言うのか」 「いやいやいやいや、だから俺が呼んだんじゃ……」 『へい相棒っ! この声は女だぜ。願いを言えってんだから言ってやれ。女に願うのはただ一つ。メェーイク・ラヴだってな。ギャハハハハハッ!』 「お前は黙ってろ。俗物AIがっ!」 「貴様、そのようなことの為に私を呼んだとは………」 「待て、待ってくれっ! 今のはコイツが……って、うおっ!?」 砂塵の先から突然飛来する炎の塊が真横を通り過ぎ、壁に大穴を空けた。 『高次エーテル反応。カテゴリB。急ぎ機体に避難して下さい』 「どの口が言ってんだクソッタレ!」 爆風に砂塵が吹き荒ぶ中、声の主が砂塵越しに姿を現す。 その姿はまるで、遥か昔の記録にあった騎士。漆黒の鎧を纏った騎士であった。 黒鎧は再び砂塵に隠れるも、そのシルエットは巨大な剣を構え、巨人へと飛びかかる。 男は慌てて巨人の中に滑り込み、ハッチを閉めた。 これが、長き戦いの幕開けである。
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