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疾る巨人。
推進機構は景気良く火を吹き、車輪は豪気に礫を飛ばす。その勢いを留めること無く活かし、巨人が力任せに剣を振るう。
『シャラァッ!』
「くぅっ!?」
一合交え、黒鎧がよろめく。
巨人は勢いを殺しきれず、黒鎧の横を滑り壁にぶつかった。
そして、二人にとって、この結果までもが互いを困惑させていた。
持てる限界の推進力を乗せた一撃をいなす黒鎧に。
返す刀で断ち斬るつもりが、いなす事しか出来無かった巨人の剣撃に。
だが、同時に同じ事を考えた。
こいつの『壁』は、接近戦では使えない…と。
先に動いたのは黒鎧だった。
「神々に仇為す力を司りし悪竜よ。
戦神となり我が身で謳え。“Crom-Cruach"」
黒鎧が紡ぐはやはり言霊。
しかし、先程迄のそれとは違い刃や炎が現れる訳では無く、蛇のようにうねる朱色の影が螺旋状に鎧を昇り、締め付けるような朱で染めた。
「闇の衣よ。翼を授けよ」
更には霧状の闇が集まり、形を帯びて翼となる。
『今度は何だ?』
『超高次エーテル生命体との身体同期。及び、第四種暗黒物質の幻像昇華だ』
『さっぱり分からん。シンプルに言えっ!』
『身体能力が向上して翼が生えた』
『オーケー。分かり易い。後半は見りゃわかるが』
黒鎧は大きな翼をはためかせ、その場に浮遊する。と、次の瞬間に姿を消した。
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