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(……あれを止めるか)
しかし、それは黒鎧も同じ事であった。
拮抗した力を持つ二体に訪れた差。 刻まれた二痕。その理由は単純、黒鎧は巨人以上に己の体に無茶をした。黒鎧の担い手を朱の染みが侵していく。
「クククク……」
だが、その口からは喜悦が漏れる。
重い兜の中に静かに笑い声が響いた。
『リボルブ・スクイーズ換装用意。レディアント・ハウンドもだ』
『こっちも限界だ。出来るだけ速く決めてくれ』
勝負を急がせる相棒。巨人の乗り手は思わず苦笑を溢した。出し惜しみなど無く、既に限界以上。ただ、幾多の戦場を越えた直感は言う。
『安心しろ。もう終わる』
どちらが勝つかは分からないが。
その言葉は胸に秘め、推進機構が火を吹き、巨人は再び駆って行く。
眼前に敵を捉え、放つは双剣。
剣技においては本来防御の役割を持つ短剣すらも斬撃を繰り出し攻める。
迎え撃つは大剣。
静寂から一瞬。その身は再び光を体現し、己を傷付けんとする双刃を弾く。
交えること数合。時にすれば一秒にも満たぬ間。
剣は攻めるより守ること難し。と言えども、実力の差。速さの差。
黒鎧の一閃に巨人の首が舞った。
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