第1章

2/10
前へ
/10ページ
次へ
「皆おっはよーー!」 そんな声をあげながら、僕は教室の中に入った。 シーン……、そんな擬音が似合うかのように静まり返った教室。 皆、一点を食い入る様に見つめていた。 視線の先には勿論僕。 な、なんだろう……? 若干居心地が悪くなりながらも僕は窓側後列、奥から2番目の自席に向かって歩みを進めた。 そうして僕が自席に着くと、朝特有の騒がしさが再び教室を支配した。 さっきのは何だったんだ、そんな事を考えながら鞄の中を確認していると ユメガサキ 「夢ヶ崎君。さっきのはどうしたの?」 と、右隣から声がした。 そちらに顔を向けると、まず第一に視界に入るのは、その綺麗な黒髪。 第二にどんな人でも魅力的に感じるであろう、完璧な笑顔。 そして最後にとても高校生とは思えない豊満な胸。 さらに付け足すと端整な顔立ち。 何が言いたいかと言うと美少女がそこにはいた。 クジュウ クオン そんな彼女の名前は九重空音。 「どうしたの……って何がさ。 九重さん」 そんな俺の言葉に彼女はコロコロと笑うと、 「何がって、そのキャラだよぉ。 先週までと全く違うじゃない? もしかしてイメチェンのつもり?」 いやいや、と僕は優しく微笑み、 「何言ってるのさ、九重さん。 僕はずっとこうじゃないか」 僕のそんな言葉に九重さんは少し考え込むように顔を下に向け 「……。あくまでそのキャラで通すんだ。 夢ヶ崎君、面白いねぇ……」 そう何かを呟くと、こちらに顔を向け 「ねぇねぇ、夢ヶ崎君。今から私、夢ヶ崎君の事下の名前で呼ぶからさ、私のことも下の名前で呼んでよ。 クラスで私の事名字で呼ぶの君だけだしさ」 そう告げた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加