第9話 【内緒の関係】

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「不要な骨だから放置可って…、あなたはドクターだからそんな簡単に言いますけどね、一般人は痛けりゃそんな風に割り切れませんよ?」 「ところで、カルテ探しに来たんじゃないのか?」 「えっ?…はい、そうですけど…」…つーかっ、人の話聞けよ! 尖らせた口を、もはや諦めたようにへの字に曲げる。 「で、そのカルテは?足もとに何冊か散乱してるけど」 先生は私の背後に視線を飛ばす。 「へ?そうだ!香川さんに頼まれたカルテ!えっと……あっ、あれだ!」 私は彼から体を離し、目的のカルテの側に駆け寄る。 「待て。俺が拾う。しゃがむとまた痛いだろ?良いよ、落ちてるやつも俺が棚に片づけてやるから」 そう言って、先生は自分に近いカルテから順に拾い始めた。 「…ありがとうございます。お言葉に甘えて」 私はその場で立ち止まり、彼の厚意を嬉しく思いながらしおらしく頭を下げた。 「1が茶色…2が黄色…3が緑…何だ?この数字ごとの色分けは」 先生はカルテ番号に使われるシールを見つめ、首を傾げる。 「カルテは下桁で探していくので、数字で色分けして収納していくんです。えっと…その二冊は上から二段目。これは一番上ですね」 「…ああ、そうか。探すコツが分かった」 私の指示するままに、…いや、途中から指示など要らずに先生は手際よく次々と棚に入れていく。 全てのカルテが棚に納まった直後、 「…あの、今更なんですけど…先生はどうしてここに?」 全くもって今更な質問をしてみた。 「麻弥と、エッチな事をしに」 「えっ!?エッチな事っ!!」 「って言うのは冗談。これを渡そうと思って」 先生はさらりと言って、白衣のポケットに手を入れる。 ……何だ、冗談か。「チッ」―――と、心の中で舌打ちしてみた。 ポケットから姿を現し、目の前に差し出された小さな紙。 「俺のメアド。昨日、教えそびれたから。仕事終わったら寄るとこがあって、直ぐに携帯出れないかも知れない。支度できたらメールして」 そう言って、先生は私の手のひらに紙を乗せた。
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