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―――――――
一瞬、時の流れが途絶えたかのような沈黙。
リビングの天井に埋め込まれたエアコンの音が、やけに響いて聞こえてくる。
明日から一緒に暮らそうって…
部屋は空いてるから大丈夫?我ながらナイスアイデア?
まだ知り合ったばかりで……いや、知り合ってはいたけれど、いきなり同棲だなんて…
「…本気で言ってるの?」
ポカンと開けっぱなしになっていた口が再起動し、疑心に満ちた声を放つ。
「勿論。…何か、問題でも?」
先生はやや首を傾げ、眉をクッと引き上げる。
なっ、何なの!?
その「当然正論」みたいな、すっ呆けた反応は!
「問題あるでしょ!まだお互いよく知らないのに、いきなり同棲生活だなんてっ!」
「お互いよく知らない?俺は麻弥を知ってるけど。右足の付け根を舐められると感じやすいとか」
「うわぁーっ!!なっ、なに言ってんですかっ!私が言ってるのは身体の話じゃなくってっ!」
ゆでだこの様に耳まで真っ赤にして、慌てふためく私。
「肌を重ねて、性感帯まで知ってる仲なのに、これ以上何を知り合う必要があるわけ?」
先生は涼しい顔で私を見つめながら、ククッと喉を鳴らして意地悪気な笑みを浮かべる。
「性感帯」という言葉が妙にいやらしく聞こえて、油を注がれたように更に顔に火がつく。
「何を知り合う必要って…家に入る訳ですから、信頼関係と言いますか…その、事の順序と言いますか…」
手のひらにジワリとした湿り気を感じながら、しどろもどろに言葉を並べる。
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