第9話 【内緒の関係】

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「…はい、分かりました」 渡された二つ折りの紙を見つめ、私はこくんと頷く。 「5時28分…。まだ仕事終わらないのか?」 先生が腕時計に視線を落として問う。 「このカルテを香川さんに渡したら終わりです。…あ、普段は残業になることほとんどありませんから。明日からの咲菜ちゃんのお迎えは大丈夫です」 先生が19時までに行く保育園のお迎えを心配しているのかと思い、慌てて言葉を返した。 「今後、どうしても残業になりそうな時は杏奈に連絡してくれ。そこに杏奈の携帯番号とメールアドレスも書いてある」 「杏奈さんに…ですね」 紙を広げ、羅列された番号と英数字を目で追った。 「じゃ、そういう事で」 言葉を短く切って、先生が一冊のカルテを差し出す。 それは、お尻を負傷する原因となった目的のカルテ。 あっ、そう言えばまだ受け取ってなかった! 先生が「エッチな事をしに」だなんて動揺させるから ――忘れてましたよ。この存在を。 上目使いで何と無く照れ笑いを浮かべ、カルテを受け取ろうと手を伸ばす。 それを掴んだ直後、先生の手はカルテから離れそのまま私の腕を捕らえた。 えっ!? 先生の胸もとに引き寄せられる私の身体。 首筋に近づく先生の熱。 「…んっ……ぁ…」 右の耳朶に、先生の唇が触れた。
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