イレイザー

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 だだっ広いグラウンドにタカミツはいた。グラウンド中央では地面を蹴る音と土煙が忙しないが、タカミツの周囲は至って静かである。    タカミツは考えていた。    今日のこの戦い、勝てば全員分のから揚げを貰う事ができる。しかし負ければ、給食のメインであるから揚げは消える。    メインディッシュが豪華な場合、他のおかずは質素になるというのが学校給食の常識のようなものだ。事実、今日の給食はからあげを除けばもやしと味噌汁。健康管理に気を使っている老人のような食事だ。修行中のお坊さんでも、もう少しまともな物を食べられるのではないだろうか。    体育の時間タカミツは、グラウンドに教室の机の配置を描き、一人でぶつぶつ呟いていた。クラスメイトは皆サッカーをしている。    タカミツは運動が苦手だった。今までコレと言えるほどの運動経験もなく、身体を動かすことが嫌いと言うわけではないが、特別好きというわけでもない。今まで運動能力で特に困ったこともなかったため、特にスポーツに挑戦しようとも思わなかったのだ。    運動の得意なタケシは女子から喝采を浴びている。しかしそれを羨ましいとは思わなかった。むしろ作戦を考える時間の与えられた自分は有利だと、そう考えていた。偏屈な少年である。    
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