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「つくね、明日学校でちゃんと謝れよ」
「へん、きっかの事だからどーせ明日になったらケロッとしてるって」
「そうだとしてもお前が悪い事をした事実は変わらない」
気に喰わないのか、わかりやすくしかめっつらになるつくね。
「でもよーっ! チクる事ないだろ!? しかもみんなの前でだぜ!? 友達なら黙ってんのが普通じゃないのか!?」
「きっかの気持ちになって考えてみろ。アイツはちゃんとひとりで真面目に毎日コツコツと宿題をやっていたんだ。そこへお前がたった一日で、しかも他人の力を借りてやってしまった。しかもそれを恥じるどころか誇らしげにしている。それを見てどう思う? 面白くないに決まっているだろ」
「でも」と呟き押し黙るつくね。
「例えて言うなら、野球の試合で1回から9回までコツコツ1点ずつ得点を積み重ねてきたのに、その裏で不正と反則によって10点入れられて逆転負けを喫したようなもんだ」
頭の中でその状況になったつもりで考えているのか、吊り上がった眉がハの字に変化していく。
やがて、つくねの頭の中で結論は出た。
「……そうだな。そりゃ、審判に抗議したくなるよな」
再びキッと決意を帯びた表情を見せると、
「オイラ、今すぐきっかに謝ってくるぜ!」
つくねはそう俺に告げ、店を後にした。
単純で籠絡されやすいが、それがアイツのいいところでもある。
「オレも行ってきます。テンチョーの言う通り、つくねに手を貸したオレにも非があります」
あおばもすぐにつくねの後を追った。
やれやれ。客がひとりもいなくなってしまったな。
「--ぅわ~ん」
ん……あの泣き声は--
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