1章

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それから3週間後の12月の上旬 ある日の授業中、急に転校生がペンをそっと置いたのだ。 最初は気づかなかったけど途中から、こいつ…さっきから黒板しか見てないぞ? 彼女はこの時も凛とした表情だった。とてもじゃないが困ってる様子には見えない。 もしかしてシャーペンの芯が無いのか?でも色ペンとか他にもやり ようはあるはず…ん? よく見ると転校生の机には教科書とノートとシャーペン一本しか無かった。 …こいつ…文房具忘れてるのか…シャーペン、誰から借りたんだろ? とは思いつつも、さて、どうしたものか…あんまり関わりたく無かった相手に物を貸すのだ… うーん…けど…相手だって…なぁ?けど流石に見過ごすのも… そんな葛藤の末、俺は筆箱からシャーペンと消しゴムを出した。 「これ使いなよ…」 と転校生の机に置きながらボソっと言った。 「え…」 彼女は少し驚いた様子の顔で俺を見た。 そして 「あ、ありがと」 と言い、すぐ黒板に目をやりノートを取った。 その日の放課後、天馬と一緒に帰ろうと昇降口に行くと俺は明日提出の宿題を教室に忘れたのを思い出した。 「…だるぃ…悪りぃ…ちょっと天馬待ってろ」 「おう」 教室に足早に向かうとそこには転校生がいた。 俺はというと マジかよぉぉぉぉ…うわっ気まずいわぁ… など、血の気が引く思いをしていた。 転校生は俺に気づいたらしく、あ、と言いながらこっちを向いた。 もちろんこの段階で気まずさMAXだ。 と、思いながらも教室に入って無言で自分の席に向かった。
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