大樹の丘

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「シンヤー! ショコラ、チョコレート食べたぁい!」  気持ちの良い春の風が、丘の若草の上を走る。  そのてっぺんで大樹が立てる、穏やかな葉擦れの音。  広い木陰でのんびりと一休みしていた旅人が、羽根をぱたぱたさせながら周りを跳び跳ねる白兎を捕まえて、ひょいっと抱えた。 「ショコラ、あんまりチョコレートばっかり食べてると……ぷにるよ?」  シンヤの悪戯っぽく煌めく真昼の空のような水色の瞳が、ショコラのピンク色の瞳を覗き込む。 「ショコラ、ぷにぷにじゃないもん!」  短い手足をじたばたさせ、抗議するショコラ。  首に巻いた真ん中に金の飾りボタンのついたチョコレート色の大きなリボンが、ショコラの動きに合わせて揺れた。 「あはは! そうだね、ショコラはとっても可愛いよ」  口を大きく開けて笑うシンヤの手から逃れ、紐で縛った肩より長いアイリス色のシンヤの髪を、ショコラが白い翼のついた金色のステッキでぺしぺし叩く。 「ばかばか、シンヤのばか」 「ちょ、痛い、痛い。カドュセウスで叩くのは反則。ごめん、ごめん。ほら、ショコラ。ひと欠片だけだよ?」  シンヤがショコラの口の中にチョコレートを放り込んだ。
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