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左右に伸びる簡素な木の柵の切れ目。
その開けっ放しの木の門を潜ると、村人たちの好奇に満ちた視線に迎えられた。
「こんにちは、皆さん。私はシンヤ、旅の絵描きです。こっちは妹のショコラ。滞在の許可を頂きたいのですが」
シンヤが誠実そうに丁寧に挨拶すると、村人たちの中から小麦色の髪をみつあみにしてひとつにまとめた娘が歩み出る。
頬に散ったそばかすが愛らしい。
「ようこそ、パストラルの村へ。私はトリテ、村長の娘です。シンヤさん、ショコラちゃん、何も無いところだけど歓迎するわ」
そうトリテがにこっと笑うと、シンヤの瞳も和んだ。
ショコラもシンヤの背中から顔を覗かせ、ぺこりと頭を下げる。
「ありがとうございます、トリテさん。ところで、今晩の宿を紹介して頂けますか?」
シンヤの問いかけにトリテがくるりと後ろを振り返り、ひとりの老女を招き寄せた。
「ねぇ、ヴィア、どうかしら? 彼らを泊めてあげられる?」
「ええ、ええ、大丈夫ですよ。息子たちが独立して、部屋は空いていますからね。モーリスもお客様をお招き出来て、喜ぶでしょう」
ヴィアが嬉しそうに小さく何度も頷きながら手を擦り合わせる。
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