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「柏木さん!」
コージが私の名前を呼ぶ。
「はいっ」
急いで席を立ち、彼のデスクの横に立つ。手に持っていた用紙の一部を指さし、チラリと視線を私に飛ばす。
「ここ、間違ってる、さっき直してって言ったはずだけど?」
その視線には甘さのかけらもない、
「す、すみません」
焦る私。背中は冷や汗ダラダラ。その様子に気が付いたのか……
はぁ~、大きなため息まで吐かれた。
「一度言われたら、一回で直さないと……」
「はい」
「まだ、会社に入りたてだから、ミスはしょうがないけど……、指摘されたところくらいは、きちんと直して持ってきて」
甘さどころか、氷点下なみに 冷たい……
「申し訳ありません」
ペコリと頭を下げる。
「次はないからね」
きつい一言。コージ、もとい、私の指導係はめちゃめちゃ厳しい。
「はい、本当にすみませんでした、すぐに直します」
もう一度深く頭を下げた。
「ん」
短い返事で、コージは、自分の前のパソコンに視線を戻した。
すごすごと席に戻る私。
はぁ~、隠れて嘆息。しっかりしなきゃ……
気合を入れ直し、画面を睨む。
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