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更に1時間が経過して……ようやく、今日中にやらねばならない仕事を終えた。
「終わりました」
到底、笑顔とはほど遠い顔をして、私はコージのデスクの横に立つ。受け取った書類を、コージは、パラパラとめくり、中を確認。
「ん、よしっ、いいよ」
座ったままでチラッと私を見上げる。
それだけで、ドクンッ、と心臓が無駄に跳ねる。
バカバカッ、自分を自分で叱り、深く頭を下げた。
「あのっ、今日は迷惑をかけてすみませんでした」
コージに謝罪する。時間外に仕事をさせてしまったのは、事実だし、それは紛れもなく私のミスのせい。いろんな事で頭に来てるけど……
そこは仕方ない、私は彼の部下だから……
「以後、気をつけます」
「……」
コージは無言だ。長い沈黙の後、
「顔、あげて……、入社したてなんだから、ミスは仕方ない……これから、気をつければいいよ」
思いのほか、柔らかい口調だったから、思わず、顔をあげてしまった。
目があって……
「お疲れ♪」
ニッと笑う。
ズルイ……、その顔は、絶対にズルイ……、私が好きになった、あの顔で、
私に笑いかけないで……、私を拒否したくせに、
そんな優しい瞳で私をみないで、
ズルイ、ズルイ、ズルイ!
目の奥がジーンと熱くなって、
「お疲れ様でした、お先に失礼します」
私は早口に捲し立て、足早にフロアを出た。涙が零れそうになる前に、ここから出たかった……
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