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「佐藤、俺は二次会には行かない、ちなみに、柏木も行かない」
えっ? 聞こえたコージの声に、私は唖然。私、行かないって言ったっけ? まぁ、行くつもりはなかったから……間違ってはいないんだけど……
何故、それをコージが宣言するの? なんか、おかしくない? 怪しまれるよ? 私達、なんでもないのに……
ギュッと噛みしめた唇。当の本人を置いて、勝手に会話は進んでいく。
「え~、2人してこないんですか?」
がっかりしたような佐藤さんの声。
「そう、行かない、俺たちは帰る」
「え~、マジでですか? 菅沼さんはいつも二次会参加してるじゃないですかぁ?」
「悪いな……今日は、ちょっと、用事がある」
「えぇ~、それに、なんですか? 俺たちって?」
「俺、一人じゃないから、俺たち、だろ? なんか間違ってる?」
「ん? そう言われると、間違ってないですけど……なんで、一緒に帰るんですか?」
ふて腐れた様な佐藤さんの声。
「駅に向かうだけだよ、お前、酔い過ぎ……、何、当たり前の事聞いてんの?」
少しだけイラついた感じに聞こえるコージの声。酔った佐藤さんは気付かない。
「えっ? あっ、そうか……駅ね……そうですよね……駅に行かないと帰れませんもんね?」
「そっ、じゃっ、……後、よろしく、柏木さん、行くよ」
肩越しに私を振り返る。目があって、トクンと心臓が跳ねた。
そして、来い、とその目が言っている。
コージはズルイ、
私に断る選択肢がないことを、知っているくせに……
何かに引き寄せられるようにして、私は一歩を踏み出した。
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