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駅までは無言だった。少し前を歩くコージ。振り向くことはない。何で、私たちは一緒に歩いているのだろうか……
一人で帰れます、
そう言えばいいのに言わない私は……コージと同じくらいズルイ女だ……
「○○駅だよね?」
改札手前でそう尋ねられ……なんで知ってるの? と、一瞬思ったけれど……
あぁ、そうか、上司だもんね、私の履歴書持ってるはずだ……そう理解して、素直にハイと頷いた。
「俺もそっち方面だから……送る」
そう言って、先に改札を通り抜けた。
えっ……、同じ方向なの? 戸惑う私。
が、突っ立っていても仕方がないので、私も改札をくぐる。
ホームへと続く階段をのぼりながら……少し霞がかった頭で私は考えていた。
お家……、どこなんだろう……私は知らない、コージがどこに住んでるかなんて……実家なのか……はたまた、今は一人暮らしなのか……私は知らない、あの頃も、今も……何も知らない
私の知ってるコージは……駅のホームにいた姿だけ、
あぁ、あと、もう1つ――、
一緒に花見をした、あの日のコージだけ……
すごく、すごく大好きで、毎日ホームで見ていたのに……今、目の前を歩くコージと私の思い出の中のコージは、ちっとも重ならない……
まるで、別人のようだ……
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