2

14/20
前へ
/38ページ
次へ
駅までは無言だった。少し前を歩くコージ。振り向くことはない。何で、私たちは一緒に歩いているのだろうか…… 一人で帰れます、 そう言えばいいのに言わない私は……コージと同じくらいズルイ女だ…… 「○○駅だよね?」 改札手前でそう尋ねられ……なんで知ってるの? と、一瞬思ったけれど…… あぁ、そうか、上司だもんね、私の履歴書持ってるはずだ……そう理解して、素直にハイと頷いた。 「俺もそっち方面だから……送る」 そう言って、先に改札を通り抜けた。 えっ……、同じ方向なの? 戸惑う私。 が、突っ立っていても仕方がないので、私も改札をくぐる。 ホームへと続く階段をのぼりながら……少し霞がかった頭で私は考えていた。 お家……、どこなんだろう……私は知らない、コージがどこに住んでるかなんて……実家なのか……はたまた、今は一人暮らしなのか……私は知らない、あの頃も、今も……何も知らない 私の知ってるコージは……駅のホームにいた姿だけ、 あぁ、あと、もう1つ――、 一緒に花見をした、あの日のコージだけ…… すごく、すごく大好きで、毎日ホームで見ていたのに……今、目の前を歩くコージと私の思い出の中のコージは、ちっとも重ならない…… まるで、別人のようだ……
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

341人が本棚に入れています
本棚に追加