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「――あれ? 菅沼じゃん?」 ふいに名前を呼ばれて……俺はカウンターに肘をつき、顔を覆うようにしていた左手を緩め、ゆっくりと、顔をあげた……。 同じ会社の、部署が隣の大村先輩が立っていた。 大村先輩は、俺より1つ年上で……大学時代からのサークルの先輩でもある。 「何、今日、お前の部署歓迎会じゃなかったっけ?」 「そうですよ」 「なら、なんで一人でここで飲んでるの?」 「一次会で抜けたんです」 「よく抜けれたね?」 「家に帰るつもりだったんですよ……でも」 「でも」 「飲みたくなったから、帰るのをやめたってだけです」 「ふ~ん、……隣いい?」 いい? とか言いながら、もうすでに腰かけてんじゃん、 「俺、今、一人で飲みたい気分なんですど」 「何? ご機嫌斜め……? お兄さん、俺、こいつと同じのちょうだい」 カウンタ-の向こう側にいた、バーテンダーに笑顔で注文を済ます。 「かしこまりました♪」 「で、なんで斜めなの?」 からかうような先輩の口ぶりにイラつきがます。 「ほっといてください」 グイッと残りのグラスを煽る。
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