1

16/18
283人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「――あの日……菅沼さんは、私に会いに来てくれましたか?」 私の声は、かすかに震えていた。結局……私は、あの瞬間から……今だに、一歩も進めてなくて……あなたを思うループから、抜け出せないでいる。 俯く視線。怖くて顔を上げることはできなかった。長い沈黙の後――、 「――行ったよ」 聞えたその答えに、ハッと顔あげた。 「えっ……」 戸惑いの声。 「君に会いに行った」 「う、そ……」 信じられない思いでいっぱいだった。 「付き合うつもりだったのか? と言われたら……正直、わからない……でも、もう一度、君に会いたいと思ったから……会いに行った。卒業式が終わってすぐにね……」 「……」 「君はいなくて……ガッカリしたのを今でも覚えてる……そして、駅で君をずっと待ってた…それこそ、バカみたいに?」 肩を竦めてみせた。 「……」 私は、言葉が見つからなくて、ただただ、ジッと見つめることしかできない… 「ったくさぁ~、なんで、待ちます! って言った本人がいなくて、待たせるはずだった俺が待ってんだよっ! って、何度も自分に問いかけた……」 「……」 「からかわれたのかも知れない……そう思ったら、すごく頭にきて……何度も帰ろうって思った……でも、どうしても、足が動かなくてさっ……結局、日が暮れるまで、あそこにいた……」 「……」 瞼に浮かぶ光景。ベンチで一人、ポツンと座り込んだコージ。最後の学生服を着て……私が来るのを待ってた? 溢れ出した涙。ポロポロと零れ落ちていく。涙を拭うことすらできず、私は、ズズッと鼻を啜りあげた。 「わ、私――インフルエンザになったの」 「えっ?」 間抜けな返事を返すコージの顔は、涙でぼやけて見えなくなった。 「告白した日の夜、高熱が出て……翌日、病院で、インフルエンザって言われたの」 「インフル?」 大きく頷いた。 「外出禁止を言い渡されて……あの日、駅に行きたかったのに、行けなかった……」 「……」 「ご、めん、なさい」 しゃくりあげながら、謝った。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!