2人が本棚に入れています
本棚に追加
大都会、東京都に隣接する平凡な街、埼玉県。そこに住む、今年から大学生となる相模妃愛(サガミヒヨリ)は、憧れの大学に胸をおどらせ、いつもより早く家を出た。
妃愛は、朝の空気が好きだった。
季節ごとに違う、ドアを開けた時に感じられる香りや音、そして景色。
春は桜の香り。夏は蝉の声。秋は紅葉の、冬は雪の景色。
ついこの間、妃愛は志望校であった私立更科大学に合格し、高校3年間という青春にピリオドを打った。
妃愛の目指している職業はない。ただ、オープンキャンパスの時に印象的だった、更科大学で必ず自分の夢を見つける事が出来る。そう思っていた────いや、そう信じていた。
だが、妃愛の考えは甘かった。
妃愛は希望した学科────経済学部での勉強に、全くついていけない。将来の夢を見つけるどころか、進級さえ危うくなる可能性があった。
最初のコメントを投稿しよう!