第1章

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大都会、東京都に隣接する平凡な街、埼玉県。そこに住む、今年から大学生となる相模妃愛(サガミヒヨリ)は、憧れの大学に胸をおどらせ、いつもより早く家を出た。 妃愛は、朝の空気が好きだった。 季節ごとに違う、ドアを開けた時に感じられる香りや音、そして景色。 春は桜の香り。夏は蝉の声。秋は紅葉の、冬は雪の景色。 ついこの間、妃愛は志望校であった私立更科大学に合格し、高校3年間という青春にピリオドを打った。 妃愛の目指している職業はない。ただ、オープンキャンパスの時に印象的だった、更科大学で必ず自分の夢を見つける事が出来る。そう思っていた────いや、そう信じていた。 だが、妃愛の考えは甘かった。 妃愛は希望した学科────経済学部での勉強に、全くついていけない。将来の夢を見つけるどころか、進級さえ危うくなる可能性があった。
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