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コンクリートは僕みたいだ。中途半端に、受け止めれなかった僕だ。
マフラーに顔を埋めて、手をポケットに押し込む。僕は寒いけど、君は暑かったのだろう。最初から、合わなかった。それだけだ。
だから、僕は此処で冷たくなれば、君を溶かさずにすむと浅はかに思う。君を溶かして、泣かせた。君を溶かして、傷付けた。君は、僕には寒すぎる。でも、僕は。
雪が舞う道路の隅で、頑なに、静かにいれば、僕は、君には暑すぎなくなる。そうだろう。僕は、君を溶かさないように、優しく、寒くなる。
指先が冷えて、鼻は冷たく、耳は痛かった。
ふと、君の声が聞こえなくなった。
電信柱から顔を覗かせれば、君はもう駄菓子屋にはいない。帰路に戻ったのだろう。僕はもう、こんなことは止めよう。君には、僕は暑すぎた。寒くなれない僕は、多分、そんな気がしただけで、身体だけは凍える今を、君に近付けると錯覚している。
君に、どう近付ける。君を溶かさないには、寒くなるしか、ないのか。僕は一体、君をどう見れば良い。
駄目だった。もう止めて、君を目で追わない。君は僕の熱線に溶けて仕舞うだろうから。
身体を起こして、息を吐けば揺曳した。白くて、君に似た儚い熱気だ。冬の風に淡く君だ。
途端、僕の頬に暑いものがあたる。振り向けば氷菓子を片手に君がいた。
「ごめん」
「いいよ」
氷菓子をかじり、君は暑く笑ったから、僕も暑く笑う。早い春だったのだろう。僕は君に笑うと、君は僕に、暑いもう一つの氷菓子を差し出した。
受け取ったら、君は暑く笑窪を染めた。
「帰ろう」
「うん、帰ろう」
パッケージが取られていた氷菓子をかじる。舌に広がる暑い甘さに、先を行った僕は脳髄が焼ける暑さを感じて歩を前に繰り出した。
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