ホワイトデー

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 ルケルケ・7・トーは、バイトを終えてレジデンス茜台に帰ってくるなり五階までいっきに駆け上がった。  502号室の呼び鈴を連打する。ピンポンピンポンピンポンピンポン。 「はい……?」  ドアが開いて、すごく不審そうな顔の嘉村羽子が、迷惑そうな視線で見返す。 「伊藤さん……?」 「いえ、その……、池上さんに差し上げたチョコレートは、そういう意味ではないんですよ」  ルケルケ・7・トーは血走った目をむいて、必死に主張した。 「ですから、わたくしはその……池上さんに対してそういう気持ちがあるわけでなく、嘉村さんから池上さんを奪うつもりはないんです。単に、バレンタインのことを知らなくて、そこのところ、くれぐれも誤解なきよう、どうか機嫌を直していただきたい。ええっと……」
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