14人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「いらっしゃいませ」
明るい声が店内に響く。
「なんだ、ハリクさんか」
黄色い髪の毛をツインテールにした少女は相手がハリクだと知ると、踵を返した。
「マシューは?」
「魔法の調合してる」
「魔法の調合?」
「うん、なんか仕事なんだって」
「でココアちゃんは?」
「店番。お姉ちゃんもいないし」
ココアと呼ばれた少女は椅子に座る。
白のワンピースが眩しいココアは、兄のマシューが開いている魔法屋『オンビュラート』の店員。
どこから取り出してきたのかわからないハンマーや店にあるテーブルを振り回して投げつける怪力の持ち主で、それをツッコミとして使用することもしばしば。
「邪魔するぞ」
「邪魔するなら帰って下さい」
「はい! って違う!!」
髪の毛をポニーテールにして剣を携えた少女は、ココアに詰め寄った。
「ラキアさん、顔が近いです」
「バーネットは?」
「お姉ちゃんはいません」
「そうか」
ラキアと呼ばれた少女は急にココアから離れると少し歩き回り、店内にある薬の箱に手にとった。
「ココア、カンテラって知ってるか?」
「カンテラですか?」
ココアは見たことも聞いたこともないので首を傾げる。
「ココア様、カンテラは火の精霊なんです」
ココアが生み出す精霊の一つバニラが代わりに答える。
「火の精霊?」
顔中疑問符だらけのココア。
「私は魔法が使えないから、魔除けにと思っ」
「あら、誰かと思えば、ラキアさんではありませんか」
ラキアの話を遮り現れたのは、生と死の貴婦人と呼ばれている『エルガ』だった。
「いらっしゃいませ」
「ココアさん。マシューさんは?」
「今仕事してますけど」
「また来ます。来たことをお伝え下さい」
エルガは踵を返すと、足早に去って行った。
最初のコメントを投稿しよう!