第一話

2/7
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「いらっしゃいませ」  明るい声が店内に響く。 「なんだ、ハリクさんか」  黄色い髪の毛をツインテールにした少女は相手がハリクだと知ると、踵を返した。 「マシューは?」 「魔法の調合してる」 「魔法の調合?」 「うん、なんか仕事なんだって」 「でココアちゃんは?」 「店番。お姉ちゃんもいないし」  ココアと呼ばれた少女は椅子に座る。  白のワンピースが眩しいココアは、兄のマシューが開いている魔法屋『オンビュラート』の店員。    どこから取り出してきたのかわからないハンマーや店にあるテーブルを振り回して投げつける怪力の持ち主で、それをツッコミとして使用することもしばしば。 「邪魔するぞ」 「邪魔するなら帰って下さい」 「はい! って違う!!」  髪の毛をポニーテールにして剣を携えた少女は、ココアに詰め寄った。 「ラキアさん、顔が近いです」 「バーネットは?」 「お姉ちゃんはいません」 「そうか」  ラキアと呼ばれた少女は急にココアから離れると少し歩き回り、店内にある薬の箱に手にとった。 「ココア、カンテラって知ってるか?」 「カンテラですか?」  ココアは見たことも聞いたこともないので首を傾げる。 「ココア様、カンテラは火の精霊なんです」  ココアが生み出す精霊の一つバニラが代わりに答える。 「火の精霊?」  顔中疑問符だらけのココア。 「私は魔法が使えないから、魔除けにと思っ」 「あら、誰かと思えば、ラキアさんではありませんか」  ラキアの話を遮り現れたのは、生と死の貴婦人と呼ばれている『エルガ』だった。 「いらっしゃいませ」 「ココアさん。マシューさんは?」 「今仕事してますけど」 「また来ます。来たことをお伝え下さい」  エルガは踵を返すと、足早に去って行った。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!