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昨日のゲリラ豪雨が嘘みたいに晴れた夏の昼下がり。私は帰りのバスを待っていた。
うっそうと茂る広葉樹には蝉が無数に止まり、ジンジンと音を靡かせる。その光景はまるで、樹木そのものが人間がくるのを拒むかのようなけたたましさである。
山奥にひっそりと佇む、この氷室高校は今年の六月で創立50周年を迎える。伝統と校舎の古さにおいて右に出る学校は、県内にはまず存在しないだろう。
私はそんな学校に電車とバス、合わせて二時間かけて登校する。なぜ、そんな学校にわざわざ二時間もかけて登校するかと言うと、妹のるみ子のせいなのである。
星空るみ子は私、星空ふみ子の双子の妹で、性格は退かぬ!媚びぬ!省みぬ!を地で行くような典型的なわがままタイプのお姫様。
その上、思い込みも激しくて、こうと決めたら誰がなんと言おうと勝手に実行してしまう。
去年はその発言力と実行力を買われてか、生徒会長に任命されたが、わがままっぷりは相変わらずであった。
そのあまりのわがままっぷりに当時、荒れ果てていた不良達がこぞって彼女のフォローに回り、いつの間にか気づけば全員が優等生に変わっていた。
まぁ、兎にも角にも、私はそんな破天荒な妹と一緒の学校に行くわけにはいかなかった。
何故なら容姿がうり二つだったからである。
妹の勝手な騒動に巻き込まれた回数はもう、数知れない。
ありとあらゆる男性からラブレターやら果たし状やら、色々ともらったせいか今でも若干の男性不信に陥っている。
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