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「じゃあ、僕はこれで」
フタコブラクダが軽くスキップをしながら教室へ戻っていく。
戻ったら後でお仕置きだな。
フタコブラクダの小躍りする背中を見つめて、心の中で誓いを立てる。
しかし、こうして改めて見てみると、やはり綺麗な顔立ちをしている。
なるほどな、どうやらこいつは自らの美貌を使って女子達の心を魅了しているに違いない。
…前の学校で幾度となく聞かされ続けた雨竜雷太という名前。
他校だったこともあってか、写真は手に入らなかったものの、絶世の美男子と言うこと情報は確認済みであった。
まだ、確証は得られていないが、おそらく彼に間違いないだろう。
「君、どこかであったよね?」
うん?これは…。
噂には聞いた事があるぞ。そう言って朗らかなムードを装い、最終的に女を慰み者にする。一種の誘い文句。
ナンパだ!
どうする?ナンパされたのなんて初めてだ! ワー キャー キャー
どんどん、顔が熱くなっていく。
いやいや、落ち着きたまえ。星空るみ子。これは確実にハニートラップなんだぞ。こんなんに騙されてどうするんだ!
「ね、ねぇ、話きこえてる?」
まずい、この表情は何か怪しいと思っているんじゃなかろうか。
「えっ?何言ってんの?ちゃんと聞いてるわよ!そうね、私はあなたと会った事なんて微塵も覚えてないけど、それが何か?」
なんだか、ライラック夫人みたいに答えてしまったが、まぁいい。
とりあえず、クリアだ。
しかし、ドンは曇った顔を崩さない。
「いやぁ、それが何か?って言われても…。一応これを渡そうと思ったんだけどな…、ほら」
そこに出されたのは何とカエルが無数にプリントされたPOPな傘。
何故、私の傘がそこに?
一瞬で頭の中が真っ白になる。
お父さんが中学の卒業式で買ってくれた宝物の傘。
愛らしくてそれでいてちょっとグロい私の傘が何故!
この、イケメンスタイリッシュの手に握られているのだ!
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