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思えば、あの頃は苦労だらけの毎日だったなぁ…。
過去を振り返り、思索にふける。
すると、突然、冷やっとした感触が頬をかすめたような気がした。
ふと、上を見上げるといつの間にか灰色の雲が辺りを覆い、ポツポツと雨が降り出している。
あぁ、嫌だな…と思って折り畳みの傘を開こうとすると、あっというまにスコールのような雨に変わり、ずぶ濡れになってしまった。
何とか傘を差し、停留所でバスを待っていると男子学生が頭に鞄を乗っけて全速力で、走ってきた。
彼は私の目の前にある時刻表を確認し、落胆する。
しばらくバスがやってこないのだ。
あまりの落胆ぶりに私は少し可哀想に思い、声をかける。
「あの、大丈夫ですか?」
男性不信気味の私からじゃ想像もつかないほど、自然に発せられた。
おそらく、彼も急に声をかけられてびっくりしたのか目を丸くしている。
「あの、良かったら中、入りますか?」
今度はか細い声になりながらも何とか伝える。
彼は、少しだけ考えてから、
「いや、助かるわ」と言って傘の中に入ってきた。
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