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俺は一度、深く深呼吸をして息を整える。
気晴らしに外の空気でも吸いに行こうかと振り返ってみると、自分の胸くらいの障害物にぶつかりそうになる。
「なんだ!」と思わず声を出し、飛び退くと何故か姐さんが肩を怒らせて、そこに立っていた。
「どうしたんですか?姐さん」
脇から変な汗が滴る。
「しらばっくれないで」
低く、唸るように責める姐さんの声。ある意味、お仕置きをするお頭の声よりも恐ろしいと思った。
女特有のヒステリーの前の静けさである。
改めて俺は女というのは本当に自分本位な生き物だなぁと呆れてため息を吐いた。
正直、俺はお頭や姐さん以外の女という生き物が苦手だ。
すぐ怒るし、すぐ泣くし、その上、人の苦労なんか微塵も感じずに自分の言いたい事だけを無駄に主張する。
その上、平気で大勢の人間を使って一人の人を罵倒したり、無視したりする。
要するに根が短絡的な癖に妙に狡猾的で冷酷なのだ。
だが、姐さんはそこいらの女とは訳が違っていた。
その辺の女は割と簡単にヒステリーに陥って、辺り構わず、喚き散らすが、姐さんはどこか、このヒステリーの前の静けさを楽しもうとする傾向が見られる。
根が短絡的でないのだ。
だから、そう簡単にヒステリーは起こさない。
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