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「なんなのよ、ファニーったら…………」
悔しい事この上ない。折角ファニーからユーリエの行方を掴めるかと思ったのにその答えは断片的なそれでしかなく、しかも決して探すななどと軽い脅しのような事を言われてしまった。全ては私の事を思っての事かもしれないが、やはり納得がいかない。
酔った振りをして宴の席を離れ裏の墓地で一息ついていた私の眼前に、黒い少女の姿が飛びこんでくる。
「おや。ヴィオラちゃん! もうカレオツでしゅか」
「何よ……誰かと思ったらいつぞやの瓦版屋じゃない。言っとくけどユーリエの行方に関する取材ならすぐに拒否させてもらうわよ?私が一番知りたいくらいなんだからね」
「分かってましゅよぅ。しょの……宜しぃければ隣! グッドでしゅかね」
「構わないけど」
言うが早いか、すぐさま黒い少女……ノーラ=クレソンは、私の隣にそっと腰を下ろした。
私達が遠巻きにぼんやりと眺めている礼拝堂の方では今もノリのいい人間達の酒盛りが続いている。そしてさらに浮かれ騒いだ一部の者の手合わせもまだ続いていた。
お気楽とか能天気を既に通り越して、軽薄でいい加減な彼女等の痛々しい様を遠巻きに見ていると、やはり溜息を禁じ得ない。
「はぁ~あ…………こんなに騒がしい少女等と一緒だと、酒も全然回らないわね…………」
「まぁ確かに。でもユーが酔えない理由はしょれだけじゃないでしぃょう! ヴィオラちゃん?」
ノーラは仕事柄作りなれていると思しき不敵な笑顔を、そっと私に向ける。この千里眼娘、どうやら全てお見通しらしい。
なるほど、流石は摂理の目(スペクタクルズ)の術師様。心の中でそう彼女を毒づいて私は答える。
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