第零楽章 【生と死と揺蕩う者の前奏曲(プレリュード)】

8/8
前へ
/37ページ
次へ
 自分達が人間以上の力を持つ事を知って、それ故の傲慢から、人を家畜のごとく支配しようなどと考える夜魔。   今まで持っていた以上のどす黒い欲望を叶えるべく、敵対者である夜魔と手を結び、謀略の限りを尽くす人間。  永遠の悪役を演ずる事を強いられる自分の存在に疑いを持つ夜魔と、人間社会の秩序を守る為の夜魔の存在に疑いを持つ人間。  夜魔の永遠の生に憧れる、もしくはそれをルール違反として罰しようとする人間。  人間の醜い部分に憤る夜魔と、人を愛する感情を闇の中から見出した夜魔。  そして、世界の均衡を保つべく、人でありながら人ならざる力をその身に宿した人間……術師などと呼ばれる者達。  だが彼等も……時に人から恐れられ、時に欲望に溺れ、時に己を見失い、深き心の闇を露呈して……。  争うのは人と夜魔だけの筈だったのに、今も人は人同士で争い、敵対者である筈の夜魔は夜魔と争い、人の守りである筈の術師も何をか言わんやだ。  全ての始まりたる魔法使いが没した今も、その構図は何一つ、変わってはいない…………。  この世界を……オズワルドを織りなしているのは、人と人ならざる者達の争いにより紡がれた、至上の混沌だけだ。  そして今尚、他ならぬその至上の混沌が、軋み音を上げながら世界(オズワルド)の歯車(とき)を回し続けている。  ここに、オズワルドの住人達の宿命を纏めた物語(オムニバス)がある。  貴方にもしも勇があるのなら、ここでひとつの話を語ろう。  人から夜魔の皇女へデディケートされた、人の最期の物語を。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加