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予め知っていたといえば、彼女は僕に関する情報を多く持っていた。下手をしたら、というか僕の友達よりもはるかに多く。
学校のこととか、家のこととか、サッカーのこととか。
あと、僕の想い人とか。
もしや、彼女は大の時間移動マニアで、世界中で過去起きたとされる時間移動に関係ありそうな事件を調べ尽くし、おそらく失踪扱いになっている僕に時間移動の一端を見出だした。そして、手ずから編み出した計算方法で、あの時間あの場所に僕が現れるという仮説を打ち立て、素性を完全に調べあげた上で待機していた。
とか、妄想にしてもやりすぎだろうか。
けど逆に、彼女がそちら関連に全く疎い人物だったとしたら、そんな彼女でも僕のことをあの程度把握できるくらいに、ある種の大きな事件として扱われた可能性が浮上する。
なら、戻る方法はともかく、あの後のことは意外とあっさり掴めるかも。
「ぷはっ」
そうこう考える内に息の限界を迎えた僕は、お湯から顔をあげた。
とにかく、音砂さんは必ずに何か知っている。
それもこの事態の根本に至る何かを。
「けど、どうしてそれを音砂さんは言おうとしないんだ」
それもまた疑問だ。よほどの事情があったり。だとか。
でも、よほどの事情とはなんだ。
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