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「音砂さんは僕の何をどこまで知っているんです?もしかしたら、ここに僕がいる理由も、過去への戻り方も知っているんじゃないんですか?」
本当に聞きたいの?後悔はしない?
無言で訴える響香さんに、僕ははっきりとした意思を乗せて視線を合わせた。
「あなたのことなら、何でも知っているわ」
響香さんはテーブルに肘をのっけると、手を組んで口元に寄せた。
「六海 航、2010年時点で17歳、性別は男、血液はAB型」
ぼそりと響香さんの口から最初に出てきたのは、僕の名前と年齢、性別や血液型。
「清浜市美海町出身、清浜高校2年1組在学。好物は日向夏。成績ならびに生活態度は極めて良好で、クラスメイトとも友好的。部活には所属していないが、サッカーには強い興味を抱いている」
ついで次から次へと、生まれたときから僕を知っているかのように響香さんは今までになく饒舌に語り続ける。
「卒業後は町に残り、祖父の跡を継いで農家になることを希望。主な理由はふたつ。ひとつは都会に対して不安感や疑心感を抱いているから、そしてもうひとつはある人をひとりぼっちにしないため。そう」
あなたの意中の相手でもある、夕凪 しえるをね。
「どう、これで満足した?」
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