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「どうして」
「理由は簡単よ。ここにあなたを呼んだのも、あなたのいう所のタイムスリップを行ったのも私ではないから。だから、仮にそれを私が知りえていたとしても、あなたにそれらを伝える権利は私にはないの」
「なら誰が教えてくれるって言うんですか」
「あなたの世界を創った私、をも造った創造主さま、ではないかしら」
模範解答を暗唱するように、音砂さんは淡々と述べる。
「‥‥‥狂ってる」
音砂さんと僕とでは、価値観が決定的に違いすぎる。
やはりこの人は、人間なんかじゃない。人間の形をした、何か得体の知れないものだ。
僕は腰から崩れ落ちるように、椅子に再び座った。
「それで、他に聞きたいことはあるかしら」
「結構です。今これ以上あなたと話をしても無駄な気がします」
「そう、懸命な判断ね。私も今これ以上あなたに教えられることはないもの」
音砂さんは、空になった自分のカップを持ってゆっくりと立ちあがった。
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