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「か……からかうのは……はぁ……
はぁ……やめて……っ……くれないか……」
嘘だとしか思えず、汗と共に溢れる
涙を見せたくなくて横に座り込んで空を
仰いだ。
「疲れた……」
「俺もだ……たまには……追い掛けるのも
悪く……ないな……」
「ふぅ……。
止める為に嘘つくなよ。最低だ……」
少し落ち着けば、涙は溢れずにすんだ。
どれだけ涙腺が緩んでいるのか、衛が
絡むと簡単に出てくる。
「最低とはお言葉だな。
追いかけてくる勇気はあるくせに、
こっちが歩み寄れば、逃げるし……。
同棲したいって言ってきたら柄にもなく
自惚れたのに……鞄の中見てないだろ?」
鞄の中?あぁ……確かに見てない。
「折角プロポーズを兼ねて手紙入れてたのに
帰ってこないし」
「見ない事を想定して連絡ぐらいして来いよ!!」
「いや、追い出した手前掛けづらくてな。
まぁニートが嫌いなのは本当だし、
俺の所で専業主夫すれば問題ないって
言いたかった」
「はぁ……完全に逃げ損……」
「折角お前の弟も説得したのに、
逃げ出した理由も世間体を考えて
永久に恋してたみたいになってるし」
やっぱそうなるよな……。
「まぁ、暫くは永久嬢に失恋した可哀想な
男性を演じてやるから、その間にせっせと
俺を口説いてくれ」
「受け身だと逃げるのにか!?」
「それとも、俺の目に落ちた奴の1人として
みんなに公表するか?」
「それは嫌だな」
「だろ?その間に海二の会社で世話になるか、
また新しく職を探すかでどうにかするから
それまでは衛の所には帰らない」
「えぇ!?何でだよ!!」
「ニートは嫌いなんだろ?」
「そりゃ……そうだけど……」
「だったら肩を並べるまでは待ってろ」
立ち上がって手を差し出した。
手を重ね、衛を立ち上がらせると
力強く抱き締められた。
「痛い……」
「追い出してごめん」
「俺を嫌いなんだろ?」
「まだ言うか。お前がお望みならば、
もう一度ここで愛を叫んでやろうか」
「それは丁重にお断りを申し上げます」
2人して失笑し、最後には大声で笑った。
海二が迎えに来て離れたけど、寂しくはなく、
今とてつもなく兎は幸せである。
「嬉しそうですね。
昨夜は今にも死にそうな顔でしたのに」
海二の部屋で寛ぎながら求人雑誌を捲る
俺に差し出された珈琲。
「色々あるんだよ」
3人掛けのソファーだと言うのに、
ベッタリ隣に座って雑誌を覗き見ては
ため息をつかれる。
「あいつの為ですか?」
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