plan1:俺、ニート卒業します!!

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「お着きになりました」 運転士が俺の方のドアを開けてくれて 降りるなりカードと鍵を渡された。 「俺はまた会社に戻りますが、部屋で 好きに寛いでください」 そう言ってマンションの前に1人 ポツンと取り残された。 忙しいのは知っている。 お世話になるのも初めてじゃない。 もう、部屋の広さやカードで開く扉にも 驚かなくなったけど、1人でいるのには まだまだ慣れそうもなく、荷物を置き、 リビングのソファーで寝そべる度に 今は近くに居られない兄達を思い出しては どう仕様もないくらい恋しくなるのです。 目を閉じて、無理矢理にでも眠りにつき、 朝起きる頃には全てが夢であって欲しいと 願いなから、祈りながら、楽しかった頃の 夢を見る。 ふっと目が覚めて、何も変わらぬ状況に 打ちのめされ、守れなかった自分をまた 嫌いになるのでありました。 「おはようございます。 朝食が出来上がりましたので、 召し上がってください」 起き上がってテーブルを見ると豪華な洋食が 並べられていて、大好きなアイスまである。 「ん……あっ。海二の今日の予定は?」 「1時から石田様とプリンスホテルにて 会食がありますが、それまでは一緒に 居られるかと」 「それって衛も来る?」 「リストにはそう明記されていたかと。 会いたいのですか?自分を追い出した輩と」 一瞬にして形相を変え、壮絶な威圧感で語る。 “俺が彼を許したとでも思っているのか?”と。 「べ、別に……」 「なら今日はゆっくりしてください。 今の私なら、家族の面倒ぐらい見れます。 海斗兄さんが居座ってくれても何の問題も ありません」 って言われてもなぁ……。 「弟におんぶに抱っこの兄ってどうよ」 「私は良いと思いますよ?飼い殺したくなる」 えっ、そって誉められてんの? それとも―――? 「何が兎も角、今日は部屋を出ないでください」 「何故?」 「分かりましたか?」 エプロンを外しながらにっこり黒い微笑みを 向けられたら反論する言葉を落っことし、 何も言えなくなってしまって、頷いて 承諾した。 ここに居れば何の不自由もない。 おかず争奪戦はしなくていいし、 布団も独り占め出来て、 洗濯器も泡を吹かないし、 皿も割れる事はない。 ただここにはお笑いを一緒に笑ってくれる 人が居ないだけ。 ピンポーン 「では、私は仕事に行って参りますので、 お留守番はよろしくお願いしますね」 「分かった。いってらっしゃい」
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