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「そんな問題じゃねぇだろ!!」
会場全体に響く様なでかい声。
「シッ。自分の立場とか分かってんの?」
「何だよそれ……」
「居た居た。衛、海斗君探したぞ」
軽く息を乱した石田父。
俺はこことぞばかりに衛から離れ、
石田父に近づいた。
「おじさん、先程はみっとも無い所を
見せてしまい申し訳ありませんでした」
「いや、君がそんなに永久を想っていて
くれていたとは気づかず申し訳ない」
「お気になさらないでください。
こちらかの一方的な片想いでしたので」
「いや~ここだけの話。私はてっきり衛の
嫁に来てくれるとばかり思っていたのだよ」
はい!?
「どうだね、この際衛にしておけば」
「いや、えっと……」
「衛は永久に劣らず君を養うだけの
能力も実績もある。
許嫁は君だと思っていた手前、
その方が私としても助かるのだが」
話が飛びすぎて
あ、開いた口が塞がらない……。
「親父、飛躍しすぎて混乱してる」
「おや?同棲しているんじゃなかったのかね?」
「昨日バイト辞めて帰って来たから
追い出してる。紐を養うなんて御免だからね」
「おやおや、どう仕様か。
君のお父さんも説得してしまったよ」
「何れそうなるから気にしなくても良いよ」
「あ、あの!!俺の噂をご存じですか?」
親公認ほど嬉しい事はないが、
相手も大手企業なら俺みたいなのが
望んではいけない事ぐらい分かっている。
「ん?あぁ~性別関係なく手を出すあれかね?」
知ってんだったら自分の息子進めんな!!
「俺は世間で言えば外に出すのも恥ずかしい
ニートと呼ばれる存在です。
噂の発端は……仕事の辞め方に問題があり、
1度や2度ではありません……」
口にするのも悍ましい。
自分が男に好かれる体質であると言葉を
濁してでも説明しなければならない。
早く分かってくれと願いながら
話を続けたが、表情は変わらず、
笑顔で相槌をうってくれているだけ。
「これらの話を私はどう受け取ろうか。
浮気希望と受け取れば良いのかな?」
俺が口下手なのか分かって貰えず、
「いえ、俺が傍に居るだけでくだらない
噂に巻き込まれると申し上げています」
「では働きたくないと」
「どうしてその様な噂が広まったのかは
自分でも分かりませんが、俺なんかが
傍に居るだけでご迷惑なるかと……」
「良いんじゃないかね、言いたい様に
言わせ、信じる者はそれだけの器だったと
言うことなのだよ」
寧ろ、俺が説得されている。
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