第1章

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僕は部活動をしていなかった。というのも田舎実家から通っていた為部活動すると帰りが遅くなってしまうからだ。本来なら汗水流して体を動かしたかった。 そんな事を1人で思っていたら男が近づいてきた。 「なにボーッとしてるんだよ、真那斗。これから体育だぞ。早く着替えろよ」 僕の頭を軽く叩きながらそう言う。彼は雅真(まさちか)。身長は160cmもなく可愛らしい奴だ。天然パーマが軽くかかっていて、本人曰く癖っ毛らしい。 「んー、俺も部活しとけば良かったなーってさ」 因みに僕の一人称は俺である。 「はあ?今更かよ。もう2年だぞ。だから1年のときあれだけ吹奏楽に誘ったじゃないか」 雅真の言う通り、僕はずっと吹奏楽部に誘われていた。でも楽器なんかしたこともないし、唯一経験があるのはリコーダーとベースを少しかじった程度。実際三ヶ月ともたなかったんだけど。 「でも俺楽器とか苦手なんだよ。リコーダーでさえ上手く手が回らなかったし」 「パーカッションなら出来ただろうに。打楽器ならまだ簡単だと思うけど」 「そんな事今更言われてもなー」 「とりあえず、さっさと着替えて行くぞ。今日はサッカーだってよ」 「マジ?早く言えよお前。行くぞ」 サッカーと聞いてテンションが上がった。上手い訳でもないのだがサッカーは好きなスポーツだ。 グラウンドに向かう途中、始業式の日に見た女の子が体育終わりで歩いていた。チラチラ見ながら歩いていると、 「あ、先輩お疲れ様です。今日って合わせありますよね?」 と雅真がその女の子に話しかけた。 「うん、今日あるある。今から体育?がんばってー」 と笑顔で話していた。 その女の子と別れるとすかさず雅真に聞いた。 「え、なに。知り合い?」 「知り合いってか吹奏楽の先輩」 なるほどな、と思った。部活でもしていてればそのような交友関係もあるだろう。 「あの人この前の始業式の日に初めて見たんだけどさ。綺麗だよな」 「たしかに由香先輩は綺麗だな。フルート吹いてるんだぜ。まさにお似合い?だろ」 「由香先輩って言うのか。うん、まさにイメージ通りって感じだな」 「でもお前彼女いるだろ?美来ちゃんが悲しむぞー」 そうだ、僕には美来という彼女がいる。まだ付き合って2ヶ月。美来に対して別に不満は無かったし別れるという考えも無かった。 「まあ、そうだけど。綺麗だなってだけだよ。そんなことより早く行こうぜ」
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