第二章 恐怖、呪われた聖剣

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  せっかく、ファンタジーな世界にやってきたのにMPもSPも0という絶望を突き付けられたヒロユキであったが、 「ま、まあ、採集などの依頼で生計を立てるという目的でツヴァイサー登録されている方もいらっしゃるので」 「そ、そうよ、ヒロユキ。だから元気を出して?」 「グス……」 「こんな事例は初めてなんですが、遺伝子情報があれば、登録自体は可能ですので」 「へえ、そうなんだ」 「ええ、髪の毛や爪などご提出いただければ」 「じゃあ、ちょっと一本もらうわよ?えい」 落ち込むヒロユキの頭髪を遠慮気味にコーネリアが引き抜いて、お願いしゃーす!っとお姉さんに渡した。 「で、では、少々お待ち下さい」 お姉さんはそそくさとまたカウンターの奥へと消えていった。 立ち尽くしてお姉さんを待っている間、 「おい」 「はいはい、何かしら?」 「いきなりツヴァイサー人生全否定されて始まってしまったんだが」 「まあ、戦いだけがツヴァイサーじゃないから、たまに迷子の飼い犬探して~みたいな依頼もあるし」 「そんなん自分で探せよ……」 「だからお金が発生するじゃないの」 でも異世界ってそんな物じゃないじゃない……伝説の剣とか?でドラゴンとか?そういうのとバトルしたりとか?そういう物じゃないの? ヒロユキはいじけながら心の中で精一杯叫んだ。 ちくしょう、嫌いだこの世界! 「もう帰る……」 「いやいや、ちょっとヒロユキさん?何言ってんの?」 「うるせえ、お前が召喚したんだろ、さっさと俺を日本に帰らせろ」 「いやいや、そんなん出来たらとっくにやってるし」 「じゃあ、どうやったら帰れるんだよ!まさか魔王倒せば帰れるとかか!?」 「魔王なんていないわよ?」 「魔王も不在かよぉー!?定番という定番をことごとくぶっ壊してくな、この世界!」 「まーた、ワケのわかんない事を言っちゃって」 「え?俺なの?俺の認識がおかしいの?それともこの世界の認識がズレてるの?」 コーネリアは親指をグッと立ててみせてウインクも交えながら、 「まあ、なんとかなるわよ!」 なんか楽観的な事を言っているが、こういう場合、なんともならないフラグなのをヒロユキは知っている。 もう、何も言えずにヒロユキは大きくため息を吐いて肩を落とした。
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