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せっかく、ファンタジーな世界にやってきたのにMPもSPも0という絶望を突き付けられたヒロユキであったが、
「ま、まあ、採集などの依頼で生計を立てるという目的でツヴァイサー登録されている方もいらっしゃるので」
「そ、そうよ、ヒロユキ。だから元気を出して?」
「グス……」
「こんな事例は初めてなんですが、遺伝子情報があれば、登録自体は可能ですので」
「へえ、そうなんだ」
「ええ、髪の毛や爪などご提出いただければ」
「じゃあ、ちょっと一本もらうわよ?えい」
落ち込むヒロユキの頭髪を遠慮気味にコーネリアが引き抜いて、お願いしゃーす!っとお姉さんに渡した。
「で、では、少々お待ち下さい」
お姉さんはそそくさとまたカウンターの奥へと消えていった。
立ち尽くしてお姉さんを待っている間、
「おい」
「はいはい、何かしら?」
「いきなりツヴァイサー人生全否定されて始まってしまったんだが」
「まあ、戦いだけがツヴァイサーじゃないから、たまに迷子の飼い犬探して~みたいな依頼もあるし」
「そんなん自分で探せよ……」
「だからお金が発生するじゃないの」
でも異世界ってそんな物じゃないじゃない……伝説の剣とか?でドラゴンとか?そういうのとバトルしたりとか?そういう物じゃないの?
ヒロユキはいじけながら心の中で精一杯叫んだ。
ちくしょう、嫌いだこの世界!
「もう帰る……」
「いやいや、ちょっとヒロユキさん?何言ってんの?」
「うるせえ、お前が召喚したんだろ、さっさと俺を日本に帰らせろ」
「いやいや、そんなん出来たらとっくにやってるし」
「じゃあ、どうやったら帰れるんだよ!まさか魔王倒せば帰れるとかか!?」
「魔王なんていないわよ?」
「魔王も不在かよぉー!?定番という定番をことごとくぶっ壊してくな、この世界!」
「まーた、ワケのわかんない事を言っちゃって」
「え?俺なの?俺の認識がおかしいの?それともこの世界の認識がズレてるの?」
コーネリアは親指をグッと立ててみせてウインクも交えながら、
「まあ、なんとかなるわよ!」
なんか楽観的な事を言っているが、こういう場合、なんともならないフラグなのをヒロユキは知っている。
もう、何も言えずにヒロユキは大きくため息を吐いて肩を落とした。
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